糖尿病を惹起するためにストレプトゾトシンでラットを処理したところ、1993年に改定された米国栄養学会推奨のラット飼料(AIN-93G)であらかじめ飼育したラットは、1976年改定の飼料(AIN76)で飼育したラットと比較して、生存率が著しく低いことを見いだした。そこで本研究では、このような薬物処理後の動物の死亡率が膵臓β-細胞の傷害に基づくのどうかについて明らかにするために、AIN-76とAIN-93G食で飼育したラットから膵臓β-細胞を単離し、そのインスリン分泌能について比較検討した。 まず、予備的な実験によって、コラゲナーゼ潅流法によって単離したラットのランゲルハンス島がグルコース濃度依存的にインスリンを分泌することを確認した。そこで次に、AIN-76食とAIN-93G食で予備飼育後、異なった濃度のストレプトゾトシンを投与したラットからランゲルハンス島を単離した。グルコース刺激に対するβ-細胞の最大インスリン分泌量はAIN-76食でAIN-93G食よりも大きい傾向にあった。同時に、AIN-76食飼育ラットでは血糖値が低く、血清インスリンが高い傾向にあった。これらの結果から、AIN-93G食には薬物に応答して膵臓β-細胞の傷害を強く引き起こす成分が含まれることが示唆された。 つぎに、このような膵臓β-細胞の損傷を惹起する生体内因子の検索を行った。自己抗体の形成には各種のサイトカインが関与していることから、単離したランゲルハンス島とインターロイキン-1とをインキュベートした。その結果、添加グルコースに対するインスリンの最大分泌能はインターロイキン-1の添加によって顕著に低下することが観察された。 以上の結果は、食事環境によって膵臓のβ-細胞の損傷を介したインスリン依存性の糖尿病が誘発される可能性があることを示唆している。
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