研究課題/領域番号 |
08876033
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研究種目 |
萌芽的研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
林産学
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
佐藤 敬一 東京農工大学, 農学部, 助手 (90178723)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1996年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | アコースティック・エミッション / 樹木 / 水ストレス / キャビティション / 植物診断 |
研究概要 |
近年、酸性雨、虫害などによって、森林の健康状態が危ぶまれている。森林生産物である木材を十分に利用している我々にとって、森林破壊はゆゆしい問題である。森林は一本一本の樹木からなるので、個々の樹木の健康状態の管理が重要である。特に、水ストレスは樹木の健康にとって重要な因子であるが、これを非破壊で簡便に計測する手段は未だに確立されていない。そこで、本研究では樹木の健康診断のためのAE聴診器の開発を目指し、様々な状態の植物のアコースティック・エミッション(AE)を計測し、以下の結果を得た。 植物体から発生するAEは連続型で、AEエネルギーとAE継続時間との間に相関性が認められた。スギ苗木では日射量と苗木の水分状態によりAE発生が起こり、日照のない時間帯では発生しなかった。これは、苗木では水を貯蔵する木部の容積が小さいので、日射量の変化に水分通道が敏感に対応するためだと思われる。 しかしながら、ヒマラヤスギ成木の場合は、水を貯蔵する木部の容積が大きいので、AEの発生は一日の日射量の推移には対応せずに常に発生する。今後、成木について検討を進めるには、より長いスパンの時間にたいする日射量、雨量等の条件を調べる必要があろう。また、成木からのAEには発生機構が異なると思われる2種類のAEが計測された。 カラマツ枝条培養からのAEは育成光の時間帯とは対応しなかった。AEの発生頻度は不定根の形成状態や植物体の水分状態によって異なった。AE発生機構については、根の吸水に伴うものか、根の成長によるものか、今後の研究で検討する必要がある。 長崎被爆クスノキのAE計測の結果から、日照量、気温(気象台のデータ)とAEの発生数の関係から、明らかにAEはクスノキの蒸散活動に伴って発生している。また、AEの波形は朝、昼、夕で異なっており、AE発生機構の解明には、今後の継続的な研究が必要である。また、可聴域にした音で聞いた場合の蒸散活動に伴うAEは「ピュー」であったのに対し、センサー付近の葉をむしり取った場合は「ギャ-」という音であった。葉をむしった音が葉の柄の破壊音であるのか、柄からの空気の進入による木部内の水圧変化によるものであるか検討する必要があるが、人間の心理では木の悲鳴に聞こえる。このAEによって、植物の診断の他にも、植物も我々と同じ生物として生きていること、植物を大切にすることを教える、情操教育の教材にも利用が期待できる。
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