研究概要 |
本研究では,ウズラPGCsを導入した同種間生殖細胞キメラを作出し,検定交配による導入生殖細胞由来の次世代産生を目的とした。また,導入により遺伝的性とは異なる方向へ分化した配偶子の次世代形成を調べ,さらに次世代産生以前のドナー由来PGCsの細胞系譜を追跡するため,同種異性間及び異種間キメラ研究におけるニワトリW染色体(CW),ニワトリZ染色体(CZ)特異的DNAプローブ及びウズラZ染色体由来DNAプローブ(QZ)を用いた分子生物学的解析法を検討した。 PGCsは血流移動期である孵卵48時間(ステージ14-15)の複数胚血液中から採取し,フィコール溶液を用いた密度勾配遠心法により分離濃縮した100-200個のPGCsを同発生段階胚の血流中に注入した。性成熟後,検定交配により雌雄レシピエント個体からドナーPGCs由来の後代が得られたが,雄レシピエント個体においてドナーPGCs由来のW染色体をもつ精子の受精による後代は得られなかった。 以上の結果から,ウズラPGCs移植による同種間キメラ個体において導入細胞由来の後代が得られたが,性染色体型が雄(Z/Z),雌(Z/W)の鳥類において本来存在しないW型精子の受精による後代産生は確認されなかったことから,精巣におけるW型精子の分化阻害が示唆された。また,DNAプローブについては,CW,CZプローブが,それぞれ同種異性間及び異種間キメラ個体におけるドナー細胞のマーカーとして利用可能であることが確認された。
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