研究概要 |
クロマチン(染色質)は4種のコアヒストン(H2A、H2B、H3、H4)各2分子からなる8量体にDNAが約2回巻き付いたヌクレオソームを基本構造とし、さらにヒストンH1の結合を加えスーパーコイル、スーパーソレノイドなどの高次構造を形成している。本研究は、イトマキヒトデ精巣ヒストン画分に存在する、電気泳動上でコアヒストンよりも移動度の遅れたヒストン変異体分子群(移動の速いものからp28,p29A,p29B,p29C,p29D,p29E,p29Fと命名)のうちの1つ、p28を新しい精製法を用いて精製し、構造解析を行った。さらに、このヒストン変異体分子を認識するモノクローナル抗体を作製した。その結果から、p28はヒストンH2BのGln残基とヒストンH4のLys残基でε-(γ-Glu)Lys架橋が生じ、2量体化していることが判明した。その架橋部位は、ヒストンH2Bの9位のGln残基とヒストンH4の5位、または12位のLys残基であることが判明した。このp28をヒストンd(H2B-H4)と命名した。次に、イトマキヒトデ中期原腸胚から調製した細胞核を用いてヒストンH2Bとモノダンシルカダベリンを基質としてカルシウム存在下で反応を行い、反応物をSDS-PAGEで分離し、ゲルに365nmの光を照射し、蛍光を観察した。その結果、ヒストンH2Bのバンドが蛍光を発した。したがって、細胞核にトランスグルタミナーゼが存在し、ヒストンH2Bがトランスグルタミナーゼの基質となることが明らかになった。さらに、細胞核を分画し、核膜孔-ラミナ複合体画分を得た。この画分について、細胞核と同様の解析を行なったところ、トランスグルタミナーゼ活性が確認され、その比活性は細胞核画分よりも高かった。これらの結果はヒストンd(H2B-H4)形成に核トランスグルタミナーゼが関与することを強く示唆するものである。
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