研究概要 |
我々は,萌芽的研究費補助金により以下の研究結果を得た. (1)まずPR-39 oligopeptideのE.coliに対する抗菌能をMinimum Inhibitory Concentration(MIC)にて測定した.その結果は0.83-1.7mMと従来の報告と一致した.次に,Helicobacter pylori(H.pylori)に対するPR-39の抗菌能をPR-39 oligopeptideによるMICにて測定した.H.pyloriはAmerican Type Culture Collectionより得た3株(ATCC43504,ATCC43579,ATCC43629)および臨床的に得られた34株を用いた.PR-39 oligopeptideのこれらH.pyloriに対するMICは6.7-13.4mMであり,E.coliに対すると比較して10倍程度低くはあるが,PR-39のH.pyloriに対する抗菌作用が証明された. (2)今回の研究の最終目的であるPR-39遺伝子を用いたH.pylori除菌の遺伝子治療の実験を開始した.RT-PCR法を用いてブタ小腸粘膜のmRNAよりPR-39のcoding regionをすべて含むcDNAを作成し,adenovirus vectorであるpAdex1CAwtに組み込んだ.PR-39を組み込んだadenovirus vectorをH.pyloriが感染している胃の粘膜上皮細胞に感染させることにより最低2-3週間はPR-39が産生,分泌され,H.pyloriに対して抗菌作用を及ぼすと考えている. (3)H.pylori除菌の遺伝子治療のモデルとして現在H.pyloriの感染が報告されているスナネズニを用いた.スナネズニの胃にH.pyloriを感染させると約3か月で胃炎を起こしH.pyloriの持続感染が成立することが確認された.現在このH.pyloriに感染したスナネズニの胃にPR-39を組み込んだadenovirus vectorを感染させ,H.pylori除菌の効果を検討中である.
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