研究概要 |
(A)HAM患者の末梢血リンパ球を培養すると,多くの症例でCD8陽性細胞が優位に増殖しCD4/CD8比が次第に低下した.またCD4/CD8比の低い症例ほど痙性対麻痺が重症であった.OX40,gp34はCD4,CD8いづれの培養T細胞においても経時的に発現が増加したが,IL-2RαはCD8優位に発現した.培養で増殖するCD8陽性細胞は,培養細胞中に発現が誘導されるHTLV-I抗原に対する細胞障害性Tリンパ球と考えられており,この免疫応答能がHAMの脊髄の炎症性病変形成となんらかの関連を持つものと思われる.(B)Tリンパ球の分化増殖の場である胸腺におけるOX40,gp34の発現を,正常および重症筋無力症胸腺(MG)で検索したところ,OX40は髄質,gp34は皮髄境界部の髄質側の円形細胞に散在性に発現していた.MGに特徴的な所見は,胚中心(GC)周囲の髄質ではOX40陽性細胞が極めて多数みられ,GC内にはgp34陽性細胞がみられたことである.OX40,gp34はT-B interactionによる抗体産生促進に関与しており,この所見はMGの胸腺内での活発なT-B interactionを示唆するものであり,患者の抗アセチルコリン受容体抗体の産生を促しているのかもしれない.(C)OX40,gp34の活動性の炎症性病変における発現を検討するため,炎症性筋疾患(多発筋炎10例,肉芽腫性筋炎5例)の生検筋を用いて免疫組織化学法にて解析した.多発筋炎全例でOX40陽性単核球を認め,浸潤単核球における割合は血管周囲では13.7%,筋内膜では2.7%であった.gp34陽性細胞はより低頻度に認めた.肉芽腫性筋炎では,組織の線維化の著しい長期経過例を除く4例で,OX40陽性細胞が肉芽腫内の単核細胞の7.8%にみられた.したがって,炎症性筋疾患におけるOX40陽性細胞が病巣形成に関与している可能性が考えられた.一方,いずれの症例でもgp34陽性の血管内皮細胞はみられず,OX40/gp34系のリンパ球と血管内皮との接着因子としての役割は確認できなかった.
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