研究概要 |
本研究は、コンピュータ断層画像(CT画像)を利用し、画像からの特定の腹部臓器の自動抽出、体積の自動測定を目的とした。今年度までの研究計画に基づき、検討を進めた方法論は、(1)画像間演算およびクラスター分析を用いた組織の輪郭抽出および面積計算のプログラム作成(2)斬新的領域分割法によるプログラムの作成と、これによる臓器抽出における基礎評価(3)閾値法にマニュアルによる補正を加えた臓器抽出の基礎的評価およびその臨床応用である。上記の方法を生体の腹部臓器に応用した場合、臓器のCT値の不均一や個体ごとの変動、周囲から接する腸管等の臓器の形態の個体間差異が予想以上に大きく、実際の生体例へ利用した場合、いずれの方法でもプログラムの設定範囲をこえた修正が必要であった。上記(3)の方法については、前年度のファントム実験で基本的制度が確認されていることと、症例ごとのマニュアルによる修正が容易なことから、これを用い、臨床評価を計画していた生体部分肝移植のdonor肝9例ののgraft容積の測定に用い精度の評価をおこなった。また、計測は3D-volumetry法のほか従来法(2次元手動抽出法)も施行し精度の比較もおこなった。結果:計測時と手術で確認した実測値の差は最大153,最小43,平均6.8±13.4mlで従来法の312,14,60±140より優れていた。実測値に対する誤差の比率は最大25.5%,最小9.0%,平均6.8±13.4で従来法の52,30.3,14.2±10.9より優れた。さらに誤差比率の絶対値は本法で平均9.9±10.9%,従来法で25.1±15.0であった。考察、結論;腹部臓器の抽出および体積定量の応用には閾値を基本とした半自動抽出に、個体ごとの形態変動に応じたマニュアル修正が必要で、自動化には限界があるため、解析法としての客観性に問題があるが、臨床例(肝移植症例)の実測では、本法はマニュアルによる従来法よりすぐれ、臨床応用可能な精度が示された。
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