研究概要 |
家兎より摘出した坐骨神経のMR画像を撮像し,画像から拡散係数を求めることができた.以下に具体的な方法と結果を示す.【方法】家兎をペントバルビタールの静脈内過量投与により屠殺し,坐骨神経を摘出した.摘出した坐骨神経は,周囲からの拡散の影響を排除するために,ミネラル・オイルの中につるした状態で撮像を行った.使用した機器は、静磁場を4.7テスラ有する実験用MRI(Omega CSI-II)である.撮像したMR画像は,T1強調像,T2強調像,ならびに拡散を強調したT2強調像(強調する拡散の方向を変えて2種類)である.【結果】通常のT1強調像,T2強調像では,周囲のミネラル・オイルに比べ坐骨神経は低信号に描出された.拡散強調像でも,同様の画像が得られた.しかし,長軸方向に拡散を打ち消す撮像法を行うと,短軸方向の拡散を打ち消す撮像法に比べ,坐骨神経の信号がより強く抑制され,より低信号に描出された.これにより,信号強度から,坐骨神経の拡散係数(この場合,みかけの拡散係数,すなわちapparent diffusion constantとなる)を0.37×10^3(mm^2/s)と算出することができた.また,短軸方向の拡散を打ち消す撮像法に比べ,長軸方向に拡散を打ち消す撮像法での信号強度がより強く抑制されたことから,末梢神経(この場合家兎坐骨神経)でも,拡散の異方性(anisotropy)が存在することが示唆された.
|