研究概要 |
前年度より引き続き,Thought Disorder Index(TDI)を用いて分裂病性思考障害について検討した.第93回日本精神神経学会総会(平成9年5月)において,前年度までの結果に加えて,TDIと包括的精神症状評価尺度であるBrief Psychiatric Rating Scale(BPRS)の関連について検討したところ,分裂病群においてはTDI総得点とBPRS総得点及びBPRSの思考障害クラスター得点,TDIの特異的言語表現カテゴリー得点とBPRS総得点及びBPRSの思考障害クラスター得点の間に有意な相関が認められたが,非分裂病群では有意な相関が認められなかったことを報告した.これらの結果より,特異的言語表現が分裂病性思考障害の特徴を反映するものであり,症状の安定した時期に存在することから分裂病の脆弱性と関連することなどを考察して,学術雑誌に投稿中である.また,主観的体験の側面から思考障害を捉えるため,当初はFrankfurter Beschwerde-Fragebogen(FBF)を用いることを考えていたが,より微細に自覚的体験を捉えることが可能であるBonn Scale for the Assessment of Basic Symptoms(BSABS)を用いることにした.本年度はBSABSの有用性を検討するために,分裂病群,躁うつ病群,神経症群,健常対照群を対象にBSABSを施行した結果,分裂病群は思考の認知障害,知覚の認知障害において他群と比較して有意に高値を示すことが認められ,BSABSを用いることによって分裂病性思考障害を自覚的体験の側面から評価することが可能であることがわかった.この結果については学術雑誌「精神医学」に掲載されることが決定し,現在印刷中である.MRI画像を用いた脳構造体積測定に関しては,分裂病群,健常対照群合わせて十数例行ったが,TDIにより評価された思考障害と脳構造体積の関連については,臨床変数との関係も含めて現在データ解析中である.今後も症例数を増やして検討を重ねていく予定である.
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