内分泌系の最も重要な機能の1つにホルモン分泌があげられる。下垂体、消化管、膵ランゲルハンス島、副腎髄質などでは外来の刺激に対してホルモンが分泌される“調節性分泌"が存在し、その破綻により種々の疾患が生ずる。これらのホルモン分泌細胞では細胞内カルシウムが重要なシグナルである。最近、我々は、代表的なホルモン分泌細胞である膵β細胞をモデルシステムとして、単一の細胞からのホルモン分泌を時間的、空間的に記録する系を開発した。単一β細胞の分泌はトルブタミドで刺激した際、細胞内カルシウム濃度が高レベルにもかかわらずすくに生じなかったが、一定の期間後回復した。単一β細胞は異なった刺激薬(ATPとトルブタミドあるいはトルブタミドと、カイニン酸)に反応して分泌を生じた。単一β細胞における、分泌は局所的に生じた。同一薬剤でインスリン分泌刺激の際にはβ細胞の同じ部位から分泌は起こるが、異なる刺激剤ではβ細胞の違った部位から分泌が起こることが示唆された。今後この系を用いて、単一β細胞で受容体、イオンチャネル、セカンドメッセンジャー、顆粒関連分子などの経時的および局所的動態の変化と時間的空間的インスリン分泌の関連を解析する必要がある。
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