【目的】cGMPはセカンドメッセンジャーとして、平滑筋の弛緩や視細胞の情報伝達系に重要である。cGMPの合成は、グアニル酸シクラーゼ(GC)により調節され、本酵素はいくつかの膜結合型および可溶型として存在することが知られている。今回、昨年度に報告したラットksGCに類似したヒトksGC類似遺伝子を胎盤から単離し、特性の解析を行った。 【方法】定法に従いヒト胎盤からmRNAを精製し、未知GCのサブタイプ間で保存された領域のプライマーを用いたRT-PCR法により増幅した。ラットks(kinase-like domain containing soluble)GCのcDNAをプローブとしたハイブリダイゼーションにて陽性クローンを単離した後、塩基配列を決定した。また、ksGC類似遺伝子のmRNAの組織分布についてもRT-PCR法により検討した。 【結果・考察】ヒト胎盤mRNAから得られたksGC類似遺伝子は、ラットksGCに84%相同性を示し、プロテインキナーゼ様ドメインとサイクラーゼドメインをコードしていた。しかし、ラットksGCの塩基配列と比較した場合、サイクラーゼドメインにいくつかの塩基の欠落が認められた。そのため、今回得られたcDNAがコードする遺伝子からは、フレームシフトにより完全なサイクラーゼドメインは翻訳されないことが示唆される。また、RT-PCR法によりこのksGC類似遺伝子は、ヒトの種々の組織(肺、腎臓、胎盤など)に発現していることが明らかとなった。得られたcDNAと既知GCのサイクラーゼドメインのアミノ酸配列を系統学的に比較すると、今回同定したksGC類似遺伝子は、膜結合型GCのプロトタイプであることが判明した。また、このksGC類似遺伝子は、ヒトの第10染色体に存在することも明らかにした。
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