研究概要 |
IL-2Receptorγ鎖は、IL-2,IL-4,IL-7,IL-9,IL-15受容体に共通する分子である。この遺伝子を破壊したマウスでは、予想されたように、T細胞、B細胞、NK細胞の著明な減少を認めた。さらに、われわれは、ノックアウト(KO)マウスの脾において幹細胞が、対象に比して、増加しているのを見い出した。LinKit^+Sca-1^+細胞(未分化幹細胞)は、KOマウスにおいて、野生型の10倍以上に増加しており、前駆細胞も20倍の増加がみられた。 そこで、われわれは、幹細胞を増加させる「造血微少環境」が重要な意味を持つであろうと考えた。その解析前に、8週令前後のマウスの病理学的検索を進めたところ、腸管、腸間膜リンパ節、肺、肝、腎に非特異的炎症が存在することが確認された。この所見はIL-2KOマウスにおいて観察されるものに類似し、病理菌は検出されなかった。しかしながら、IL-2Receptor-γ鎖KOマウスの幹細胞増加には、炎症が関与すると考え、さらなる検索は中止した。 造血微少環境の分子基盤を明らかにするため、われわれは、新たに受容体型チロシンキナーゼNTKとその結合因子HTKLをモデルとして、幹細胞/ストロマ細胞の相互作用検索を開始した。HTKLは、ストロマ細胞に発現されているリン酸化蛋白で、シグナルは、ストロマ細胞から幹細胞へと伝えられるだけでなく、幹細胞からストロマ細胞へ入っている可能性も示唆され、造血微小環境の解析に新しい展開を与えると期待される。
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