研究概要 |
1.in vitro実験にて阻血となった腸管から腐敗質が発生することの証明. 雑種成犬の空腸、回腸、結腸の試料をそれぞれ浸漬した整理食塩液中でアンモニア,硫化水素,メチルメルカプタン濃度は経時的に増加した.コントロールとして用いた筋組織ではそれらの増加は軽微であった.核腸管組織における病理組織学的検査では虚血性変化に続いて腐敗の進行が認められた.虚血腸管から腐敗物質であるアンモニア,硫化水素,メチルメルカプタン等が漏出すること,そして腐敗の進行とともにさらにこれらの腐敗物質が産生されるものと考えられた. 2.in vitro実験にて動物モデルの腹水,血液等に腐敗物質が出現,増加することの証明. 雑種成犬の前腸間膜動脈(ヒトでは上腸間膜動脈に相当)を結紮した急性上腸間膜動脈閉塞症モデルでは経時的に腹水が増加し,腹水中アンモニア濃度は増加した.血液(動脈血)中アンモニア濃度は前腸間膜動脈の結紮後、早期より増加しコントロールモデルと比較して有意に高値を示した. 3.臨床例におけるデータ収集とその検討. 典型的な急性上腸間膜動脈閉塞症のデータはまだ得られていないが,虚血に起因した回腸穿孔性腹膜炎,絞扼性イレウスの計2例において診断時点で動脈血中アンモニアが高値であった.腹水中アンモニア濃度も高値を示した.臨床的にも血液または腹水中アンモニア濃度は急性上腸間膜動脈閉塞症に代表される急性腸管虚血の病体を反映する優れた指標となる可能性を有する.
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