研究概要 |
胃癌、腸上皮化生に蓄積したユビキチンの解析を行うためマルチユビキチン鎖-蛋白結合体(multi-ubiquitin chain)、遊離型ユビキチン(free ubiquitin)の動態を検討し、以下の実験結果、成果を認めた。 1.試料のサンプリング 手術検体の一部、内視鏡検査下での生検材料を患者の承諾の上、胃癌、腸上皮化生、正状粘膜、各10検体をサンプリングした。この試料をTris緩衝液で抽出し、易溶性画分を、不溶性成分を8M尿素で可溶化し、難溶性画分を各々調製した。 2.multi-ubiquitin chain(MUb)、free ubiquitin(FUb)の測定 MUb ELISA,FUb RIAの二種類のイムノアッセイ系を用いて、それぞれの分画を測定した。MUbは、難溶性画分において正常粘膜に比べ胃癌で増加していた。またFUbは、正常粘膜に比べ胃癌では、有意な変化は認められなかったが、腸上皮化生において増加を認めた。したがって、免疫組織化学の手法で指摘された胃癌組織中のユビキチンの増加は、難溶性画分で癌特有のユビキチン化蛋白質の蓄積を反映するものと考えられた。また、腸上皮化生で増加しユビキチンは、遊離型ユビキチンと考えられた。このことは、発癌の機序の上でユビキチン系が重要な要素である可能性を示唆しているものと思われた。 3.現在進行中の研究 現在、胃癌と正常粘膜において3種類のユビキチン遺伝子(UbA,UbB,UbC)のm-RNAの発現をnorthern blot法により解析している。その他、免疫組織化学的手法にて、MUb、FUbの細胞局在を検討している。
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