研究概要 |
肺移植の需要は増加しているが,長時間保存の困難さもありその成績は満足できるものではない。本研究ではこれまで行われてきた肺保存研究に分子生物学的手法を導入し,肺保存時の肺組織中antioxidant enzymeのgene expressionについて検討するのが主な目的である.実験動物としてSpraugue-Dawley雄ラットを用い、ペントバルビタール麻酔下に気管切開を行って人工呼吸管理とした.ついで胸骨縦切開により肺を露出し、低カリウムリン酸緩衝液(Potassium buffered saline(PBS);K=20mM)で摘出時初回灌流を行った.灌流後標準UW液にて冷保存(4℃)を行うが,保存時間により実験群を以下の4群に分け,組織を-80℃凍結保存した.1)12時間保存群(n=5),2)18時間保存群(n=5),3)24時間保存群(n=5),4)保存なし(対照群)(n=5).以前の温阻血保存肺を用いた予備実験では,Chomczy nski and Saachi法にてRNAの組織よりの抽出,Northern blot hybridization analysisを行った結果,保存時間とmRNA発現について明らかな相関が認められたが,本研究における冷保存時間と,antioxidant enzymeであるSOD,カタラーゼ,およびグルタチオン還元酵素のmRNA発現については,明らかな相関は認められなかった.保存時間と保存後肺機能との関連については,別の機序を考える必要があると思われる.現在,保存時間とアポトーシス発現との関連をTUNEL法およびDNA histogramで解析する研究を進行させている.
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