研究課題
萌芽的研究
1. 血液中の微量癌細胞の検出本年度までに、原発性肺癌切除症例100例を対象とし、術前に骨髄液を採取し、有核球を比重分離法にて分離した。抗サイトケラチン抗体(CK2)を一次抗体に用いて、免疫組織学的(APAAP法)にてCK陽性細胞の検出を行った。骨髄中には100例中47例(47%)にCK陽性細胞を認めた。絶対的非治癒切除例を除いた81例での予後の検討では、観察期間2〜29ケ月において骨髄の陽性例39例中血行性再発を認めた例は7例(17.9%)で、陰性例では53例中5例(9.4%)であった。また、この観察期間中の6例の死亡例のうち5例は骨髄中CK陽性であった。したがって、骨髄中CK陽性症例は予後の推定に重要な因子となりうる。2. 微量癌細胞の特異的検出法極めて微量の細胞からK-ras遺伝子変異を検出する系を、mismatched primerを用いたPCR-based designed RFLP法を基礎にenriched PCR法をすでに確立しており、正常細胞中の超微量癌細胞の検出を少なくとも1:10^4の比率で検出できることを確認した。本法にて、骨髄中CK陽性症例について、K-ras遺伝子変異の検出を行ったところ16例中2例にK-ras遺伝子変異を認め、これらの症例の原発巣と同一変異であることを確認した。3. 細胞接着因子と微小転移の関連骨髄中微量癌細胞と原発巣における接着因子の関連性を免疫組織化学的に検討したところ、骨髄中微小転移を検索した62例のうち、E-cadherinの発現低下は18例(29%)、β-cateninの発現低下は23例(37%)、少なくともいずれかの発現低下は28例に.認められた。E-cadherin/β-cateninの発現陽性例の微小転移は38%に対し、いずれかが発現低下した症例の微小転移は64%と高率であった。つまり、細胞接着因子の発現低下は原発巣からの癌細胞の遊離を促し、微小転移を推定する重要な指標となる。
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