研究概要 |
前立腺癌に代表されるアンドロゲン依存癌は、その進展過程にともないホルモン依存性を消失する。私共は、アンドロゲン依存癌の依存性消失機構にアポトーシス機構の変異、とりわけアポトーシスの鍵をにぎると思われるICE(interleukin-1beta converting enzyme)遺伝子の発現異常の関与を示唆する結果を、シオノギ癌(SC115)をモデルシステムとして用いた予備研究により得ている。 本研究では、その実体を解明する事を目標に研究を推進した結果、次の1〜3の成果が得られた。 1.ICE遺伝子発現の解析:私共が独自にクローニングした異なるアンドロゲン応等性を示すSC115由来細胞に、複数のICE転写物aternative formsの発現を観察した。これらの転写物の発現と、細胞増殖のアンドロケン依存性は相関していた。cDNAクローニングにより、新たなICEのalternative formの発現を予測するcDNAを分離した。この結果は、ICE遺伝子の発現異常とホルモン依存性消失との関連を明らかにした。 2.ICEファミリー活性阻害剤を用いたアポトーシスに関与するICEファミリープロテアーゼの検討:ICEファミリー活性阻害剤YVAD-CHO,DEVD-CHO,Z-D-CH2-DCBを用いたアポトーシス阻害実験により、複数のICE様プロテアーゼの関与が示唆された。それらの実体の解明とアポトーシスシグナル伝達機構における役割の解明は、新たな研究テーマとなった。また、蛋白生合成阻害剤を用いた研究により、アポトーシス抑制因子の発現を示唆する結果が得られた。この因子の実体の解明は、新たな研究テーマとなった。 3.無細胞系によるアポトーシス機構の検討:ラット肝由来分離精製核とアポトーシス細胞由来cytosol分画よりなる無細胞系によリアポトーシスに特徴的なゲノムDNA断片化反応を検討した。cytosol分画に含まれるDNA断片化活性の検討は、新たな研究テーマとなった。 これらの研究成果を発展させることにより、癌のアンドロゲン依存性消失を解明する手がかりが得られる事が期待される。
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