研究概要 |
近年、歯および歯列欠損により生じた機能低下や審美正に対し,可能な限り自然に近い回復を求めて歯牙移植および口腔インプラント治療などが急速に発展してきた。しかしながら、天然歯の歯周靱帯と同様な生理機能ならびに生体力学的界面構造を有する理想的な歯周組織の再生および歯牙移植は、いまだ完成しておらず口腔インプラントにおいても被圧変位特性や圧感覚受容機能などいまだ問題を残している。 本研究は,理想といえる歯周靱帯再生のための基礎的知見を集積することを目指し、歯周靱帯組織における歯周靱帯由来上皮細胞(マラッセ上皮細胞)の無血清培養系を確立すること,次いで,その系を用いて,同細胞のin vitroにおける増殖と分化を明らかにし,さらに,同細胞の増殖と分化に及ぼすfibroblast growth factor(FGF)の影響ならびに同細胞におけるFGFおよびFGF受容体の発現を,同培養系を用いて蛋白質および遺伝子レベルで検討し,また,歯周靱帯由来上皮細胞と歯周靱帯線維芽細胞の細胞間相互関係を検討した。 歯周靱帯由来上皮細胞マラッセ上皮細胞は,RDとMCDB153培地に種々の因子を加えた培地とI型collagen処理plastic dishを用いた無血清培養条件下で最良の増殖を示した。また,Human Keratinocyteは,FGFR1-(IIIc),FGFR2-(IIIb),FGFR3-(IIIb),FGFR4を発現し,マラッセ上皮細胞は,FGFR2-(IIIb)mRNAのみを発現していた。また,免疫組織化学染色の結果,歯周靱帯由来線維芽細胞においてFGF-7の発現が認められた。以上の結果より,歯周靱帯由来細胞と歯周靱帯由来上皮細胞の増殖と分化にFGF-FGFR1,R2-(IIIb)系が深く関与している可能性が強く示唆された。
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