研究概要 |
口蓋裂児が正常言語を習得するためには鼻咽腔閉鎖機能を獲得することが不可欠である。鼻咽腔閉鎖機能の強化方法は、ブロ-イングと吸啜を用いた口蓋筋の負荷訓練が専ら行われているが,その他の訓練用装置は見当たらない。近年下腿筋など四股の筋肉については労力を要するトレーニングの代わりに電気刺激を用いた機能訓練が利用され始めており,その有用性についても報告が散見されるようになったが,口蓋筋に対する電気刺激の効果について言及した報告は皆無である。今回、我々は幼ラットを用い電気刺激が口蓋筋におよぼす影響を形態学的・組織化学的に観察し若干の知見を得た。3週齢ウイスター系幼ラットを用い、高頻度・短時間電気刺激群,高頻度・長時間電気刺激群,低頻度・短時間電気刺激群,低頻度・長時間電気刺激群および対照群の5群を設定した。ネンブタール腹腔内麻酔下に,各刺激群に低周波電気刺激装置を用い,刺激電極を軟口蓋の左右翼状突起部に置き,高頻度刺激群には持続時間10msecの矩形波を60Hzで,低頻度電気刺激群には持続時間10msecの矩形波を10Hzで,短時間群には1日10分間,長時間群には1日20分間刺激した。生後3週より8週まで毎日刺激を行い,8週間後に屠殺し,体重測定後,軟口蓋を一塊として切除し凍結切片を作製し,H.E,PAS,myosinATPace,NADH,SDHの酵素組織染色を行い組織像を観察し,筋繊維のタイプ分類を行い,Nexusコンピュータ画像解析装置を用いて各筋線維数および断面積を測定した。体重変化においては各群間に有意差は認められなかった。組織所見では,刺激群のほうが対照群より毛細血管が多く,SDHに濃染する傾向が認められた。8週齢における口蓋筋の筋線維数では対照群で平均256.5個,刺激群では平均243.7個と二群間に有意差は認められなかった。筋断面積では対照群の平均10.4μに対し,刺激群で平均12.3μと刺激群の方が大きい傾向が認められたが,刺激群間では差は認められなかった。
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