研究概要 |
反応分子との構造類似性に主眼を置き設計合成した液晶を反応場として用い、その液晶構造の特異性により二分子熱化学反応を立体化学的に高度に制御するという、新しいコンセプトに基づく高選択的反応系の確立を目的とした。モデル反応系として、(1)150℃前後で惹起されるフマル酸エステルと2,6-ジアルコキシアントラセンとの[4+2]環化付加反応と(2)100℃前後で信仰するニトロンと桂皮酸エステルとの[3+2]環化反応を取り上げ、液晶相下と等方性相下における立体選択性を比較検討した。以下に示すように、効率よい液晶制御系の構築に成功し、今後の進展に明るい展望が得られた。 (1)液晶中でも結晶相に近く規則性の最も高いスメクチック液晶媒体下の反応において、反応温度140℃の高温下でも異性体比24:1という驚異的な高い位置選択性を達成した。一方、コレステリック液晶媒体の不斉環境を利用した不斉制御については、極めて低い光学収率(〜2%ee.)しか得られず、再検討が必要となった。 (2)1,3-双極子[3+2]環化付加反応についてもスメクチック液晶媒体による高度制御が可能であることを明らかにした。 遅々として進展が見られなかった本分野も本研究により得られた萌芽的成果により、急速な進展が期待できる段階に達した。
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