研究概要 |
アミノ糖類に因るDNA鎖切断作用を検討する途上、これまでに、D-glucosamineからの変化中間体であるdihydropyrazine体がその切断活性の本体の一つであることを明らかにしてきた。したがって、別途合成して得た数種のdihydropyrazine体について、その切断能を確認して、化学構造と切断能との相関関係を検討してきた。これらの結果をもとにして、昨年度は、DNA鎖切断反応における反応はradical ionの関与があることを推定し、切断反応系内におけるradical ionの検出を試みた。D-Glucosamineを含むアミノ糖(mannosamine,galactosamine)について、切断反応系と同じ条件の水溶液中、ESR(電子スピン共鳴)装置により、スピントラップ剤(DMPO & DBNBS)を用いて、radical ionの検出を検討した。その結果、hydroxyl radicalと共にcarbon-centered radical ionの検出に成功した(この研究成果をまとめて公表:T.Yamaguchi et.al.,Biol.Pharm.Bull.,21,(3)205-209(1998))。DNA鎖のランダムな部位を攻撃切断するとされるhydroxyl radicalだけでなく、carbon-centered radicalの検出は、すでに公表しているDNA鎖の切断部位特異性のあることの結果を支持するものである。 今年度は、別途合成したdihydropyrazine類からも、D-glucosamineと同様な方法により、水溶液中においてradical ionを発生、特にcarbon-centered radicalを強く発生することを明らかにした(T.Yamaguchi et.al., Tetrahedron Lett.,39,8311-8312,1998)。また、合成したdihydropyrazine類が化学的に不安定であり、新規な化学変化を起こすことを明らかにした(T.Yamaguchi et.al.,Tetrahedron,55,675-686,1999)。非常に反応性の高いdihydropyrazine体からのradical ionを発生とその化学変化とが、DNA鎖切断作用といかに関わっているかを検討することが、今後の課題である。
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