研究概要 |
[目的]近年、アテローム性動脈硬化の発生・進展において接着分子を介した白血球と血管内皮細胞との相互作用が注目されている。血管内皮または白血球細胞表面上に表出されている接着分子の一部は切断され、またはスプライジングにより産生された膜貫通部分をもたない接着分子は細胞外へ放出され、抹消血中を循環する。今回我々は脳血管障害及び動脈硬化の危険因子である喫煙と血中の可溶性接着分子(ICAM-1(IC)及びVCAM-1(VC))との関連について検討した。 [対象と方法]1)発症時期と病型の明らかな脳血管障害患者52名(平均年令66.3歳、男:女=29人:23人、病型:TIA(T)7、ラクナ梗塞(L)16,アテローム硬化性梗塞(A)13,塞栓症(E)11,脳出血(H)5)とパーキンソン病など動脈硬化性疾患以外で通院中の患者14名(C)を対象として両者の血中IC,VC濃度を測定した。2)京都市内の健康センターで人間ドックを受け、動脈硬化のリスクファクターのないことが明らかな健常人男性33名(30-60歳)を喫煙中(S)12、過去喫煙歴あり(Q)10、喫煙歴なし(N)11の三群に分け、血中IC,VC濃度を測定した。血中IC及びVC濃度はEDTA血漿をR&D社のワンステップサンドイッチELISA測定キットにて測定した。 [結果]1)脳血管障害ではIC,VCともに脳塞栓群において上昇が認められた。また1例の患者において再塞栓時にVCの再上昇が認められた。2)喫煙者は喫煙歴のない群に比し、有意にICの上昇、また過去喫煙群は喫煙群に比し有意にICは低下していた。 [結論]ICとVCは脳血管障害患者、特に脳塞栓患者において上昇が認められた。また喫煙者でICが有意に上昇しており、喫煙により低下することが示された。
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