研究概要 |
高い堆積速度をもつ微細ラミナ構造堆積層から最近1万年間の環境変動を詳細に解明する研究として 1、浜名湖底堆積層の微細ラミナ構造を、実試料薄片プレパラートとし光学顕微鏡により観察、計測する方法を開発し、X線ラジオグラフによる計測法をさらに改良して、両計測法の結果を総合的に解析した結果、 (1)ラミナ構造は、堆積物全体に占める砕屑鉱物粒子含有量の割合が変化することにより形成されていること、 (2)堆積物中の藻類化石の分布のパターンは冬から春にかけての季節的ブルーミングを示すものと考えられ、このことからmmオーダー(2mm程度の厚さ)のラミナは1年間の季節変化による年層であること、 (3)mmオーダーのラミナの内部には、より細かい砕屑物粒子の含有量変化によるラミナ構造があり、各当該年間の降水量の季節変動、即ち冬に少なく、春から秋の増加を示すこと。などが明かとなった。 2、さらに、光学顕微鏡画像情報をビデオ入力しコンピューター画像解析を行なうシステムを開発し、数十年間(数cm厚)のラミナ構造を解析した。この結果、砕屑物粒子が全堆積物中に占める割合の変化は、各期間における降水量変化を示す環境指標としての可能性を持つことが判明した。 3、従来の堆積学的研究法における堆積物粒径の変化は、上に述べた砕屑物粒子占有度変化と同様に降水量変動の指標としての性格をもち、この観点から最近6,000年間の浜名湖堆積層の粒径組成変動の結果を考えると、(1)ほぼ2,000年毎に地球環境の概況が変化する長周期変動に、数十年から百数十年の環境変動がオ-ヴァーラップしており、(2)AD0〜300年ごろ、日本列島中央部では降水量の極大期だった可能性が高いことなど、東アジア中緯度帯から見た地球規模の環境変動の実態の解明についての手掛かりを得つつあるものと考えている。
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