研究概要 |
気管支喘息時に気管支粘膜および気管支分泌液中にビックエンドセリンやエンドセリンおよび肥満細胞が著明に増加することが知られている。我々は肥満細胞に局在するキマ-ゼや顆粒球に含まれるカテプシンGが、抗原などの刺激によって細胞外に分泌されるとビックエンドセリンを分解し、気管支平滑筋を収縮する生理活性物質を作っていることを想定してこれを検証した。その結果ラットの粘膜型、結合組織型キマ-ゼ、α-キモトリプシン、ヒトのカテプシンGはいずれもビックエンドセリンの種々の部位で切断しエンドセリンやビックエンドセリンの分解に働いていたが、ヒトに由来するキマ-ゼだけはビックエンドセリンI,II,IIIを限定分解し、31個のアミノ酸からなるエンドセリン(1-31)I,II,IIIを形成した。従来平滑筋収縮ペプチドホルモンとして報告されている生理活性物質は、21個のアミノ酸からなるエンドセリン(1-21)である。我々の見出したエンドセリン(1-31)I,II,IIIはいずれもラットの気管支平滑筋を収縮したが、中でもエンドセリン(1-31)IIはもっとも強い収縮活性を示し、エンドセリン(1-21)IIよりも強い収縮活性を示した。しかしエンドセリン(1-31)Iは、エンドセリン(1-21)Iよりも生理活性は弱く、エンドセリン(1-31)IIIは(1-21)IIIと同程度の弱い活性を示した。一方エンドセリン(1-31)の収縮活性は、反応液中にキモトリプシン型プロテアーゼの阻害剤を共存させることで少なくとも10倍程度収縮活性が増加したが、エンドセリン(1-21)には、このような現象は認められなかった。以上のことからエンドセリン(1-31)は細胞表面でエンドセリン(1-21)に分解されて作用するのではなく直接平滑筋に作用している可能性が高い。またエンドセリン(1-31)は(1-21)に比較して分解されやすいことが明らかとなった。以上のエンドセリン(1-31)の平滑筋収縮作用は、大動脈を用いた血管平滑筋でも認められた。さらにエンドセリン(1-31)は(1-21)のレセプターにほとんど親和性を見せないことから、新しいエンドセリン(1-31)のレセプターの存在が推定され現在解析を進めている。
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