研究概要 |
マウス線維芽細胞BALB/c-3T3を接触阻害がかかるようにコンフルエントになるまで培養し、超遠心により細胞膜画分を得た。それをオクチルグルコシドで可溶化し、HPLCを用いてMono Qカラムにアプライし、グラディエントエリューションで溶出した。そこで得られた各フラクションを透析し、プロテオリポソームを形成させ、対数増殖期のBALB/c-3T3細胞の培養液に添加し、細胞増殖に対する影響を検討すると、細胞増殖を促進するフラクションと阻害するフラクションがあることが判明した。しかし、それ以上の、コンタクトインヒビションを惹起するタンパク質の精製は、大量の材料を必要とすることもあり、困難が予想された。 そこで、より高感度なアッセイ法を開発することを念頭におき、コンタクトインヒビションにおける細胞周期制御機構の検討を試みた。具体的には、コンタクトインヒビションに関与するとされるp27Kip1をはじめとする、サイクリン依存性キナーゼインヒビッター(CKI),p15,p16,p21,p26のmRNAの発現をノーザンブロッティング法で検討し、BALB/c-3T3細胞において、細胞密度の増加にともない、p15,p16,p27の発現量が上昇することと、p21のmRNAは予想に反して、急激に減少することを見い出した。これらのタンパク質の量も、同様に相反する変化を示し、また、このとき、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)のうちのCdk2の活性が急激に減少し、retinoblastoma(Rb)タンパク質の脱リン酸化が亢進していることも明らかになった。したがって、コンタクトインヒビションにおいて、細胞膜上における細胞同士の相互作用は、なんらかのシグナルを経由して、上記のCKlの相反する発現調節を誘導し、細胞増殖の阻害に寄与しているものと予想された。
|