研究概要 |
1,ラット脊髄腰膨大部の切片をグルタミン酸脱水素酵素とNAD^+を含む栄養液を満たした培養皿に固定し、脊髄に終止する一次求心線維の終末から薬物刺激により遊離されるグルタミン酸を、増加するNADHの蛍光として共焦点UVレーザー走査顕微鏡を用いて検出した。画像解析装置を用いて、薬物刺激前と刺激後の画像間の蛍光強度の引き算を行い、蛍光強度の変化量と変化部位を特定した。毎回の実験時に既知濃度のグルタミン酸を標準物質としたNADH蛍光強度の測定を行い得られた検量線から、脊髄切片で薬物刺激により遊離されるグルタミン酸量を算出した。 2,NADHの蛍光の増加はグルタミン酸脱水素酵素とNAD^+に依存した反応により生じるもので、非特異的な増加ではないことを確認した。 3,ラット断頭後すばやく摘出した脊髄から厚さ約1mmの切片を作製し、酸素を含む栄養液中で還流しておくことにより、反応性の高い切片を得られることを明らかにした。また切片の切断面から100μm内部に焦点を合わせることにより再現性良くグルタミン酸遊離を観察できることを明らかにした。 4,カプサイシン刺激によるグルタミン酸遊離は、主として脊髄後角I,II層及びX層で認められるのに対し、高濃度K^+イオン刺激による遊離は脊髄前角を含む灰白質全体で見られることを明らかにした。 5,ホルマリンやカラゲニンをラット後肢に投与し炎症性の痛覚過敏を誘発させ、同一脊髄切片の投与足側と反対足側を観察した。投与足側の脊髄後角においてカプサイシン刺激によるグルタミン酸遊離量が有意に増加した結果から、炎症性痛覚過敏の機序の1つに、脊髄後角における一次求心線維からのグルタミン酸遊離量の増加があることが示唆された。
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