研究概要 |
生後1日目ラット脳海馬を採取し,細胞を分離して初代培養神経細胞を調製した。7〜8日間培養した後実験に使用した。グルタミン酸刺激に反応してMAPキナーゼ活性化反応が観察された。MAPキナーゼ活性化反応は,Ca^<2+>依存性経路とプロテインキナーゼC (PKC)活性化反応を解する経路の総和として惹起されていることが明らかになった。一方,グルタミン酸刺激は燐酸化チロシン残基の増強をもたらすことが報告された。本研究では,Ca^<2+>を介するMAPキナーゼ活性化反応にチロシンキナーゼの関与を検索するために計画された。標的チロシンキナーゼは細胞質に存在し,Ca^<2+>依存症に活性化されるCAKβ/Pyk2である。1)イムノブロット法で,CAKβ/Pyk2は,ラット脳海馬初代培養神経細胞,PC12細胞に存在していた。2)海馬初代培養神経細胞をあらかじめ[^<32>P]燐酸でATPをラベルし,グルタミン酸を投与して刺激した。反応を液体窒素で固定した後,ホモジェナイズしてCAKβ/Pyk2を免疫沈殿させた。免疫複合体を,SDS-PAGEついでオートラジオグラフィーで調べると,CAKβ/Pyk2に燐酸化反応有意に上昇していた。3)海馬初代培養神経細胞をグルタミン酸投与によって刺激し,反応停止後ホモジェナイズしてCAKβ/Pyk2に対する抗体を用いて免疫沈殿した。沈殿物のチロシンキナーゼ活性をポリ(glu,tyr)を基質として測定すると,活性の上昇が見られた。4)in vitroの実験で,組替え遺伝子実験法によって得られた全長の組替えGST-CAKβは,別に精製したCaMキナーゼIIによって燐酸化された。PKCは燐酸化することができなかった。CAKβチロシンキナーゼ活性を測定すると,CaMキナーゼII燐酸化反応の有無にかかわらず,CAKβ活性には変化が見られなかった。現在,in situとin vitro燐酸化反応における酵素活性に及ぼす影響について検索している。
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