研究概要 |
ネコ網膜にはA及びB型の二種類の水平細胞が存在し、視細胞に抑制性フィードバックをかける事により周辺受容野を形成する事が知られているが、その機能分化については明らかにされていない。前年度の研究で、A、B型が樹状突起終末部で異なるAMPA/カイニン酸受容体サブユニット構成を持ち、特に、低親和性カイニン酸受容体サブユニットであるGluR6/7が、A型にのみ多く発現している事が明らかとなった。本年度は、グルタミン酸受容体サブユニット(GluR2/3,4,6/7)の局在を免疫組織化学電顕法を用いて調べた。HRP標識二次抗体の金粒子置換銀増強ペリオキシダーゼ法を用いた結果、リボンシナプス直下の水平細胞後シナプス側の電子密度内に、受容体の染色粒子が認められた。錐体視細胞シナプス終末部ではGluR2/3,4,6/7の全サブユニットが発現し、シナプス陵に沿った狭い膜電子密度の領域にその局在が限定されていた。それに対し、B型水平細胞のみにある桿体視細胞シナプス終末部では、GluR2/3だけがリボンシナプス直下の後シナプス側の電子密度内に局在していた。また、双極細胞の内、錐体視細胞シナプス終末部に接するOFF型双極細胞後シナプス側の電子密度内に、顕著なGluR6/7の局在が認められた。この事実は、魚類水平細胞のみならず有尾両生類OFF型双極細胞で、ドーパミンによるグルタミン酸応答の増大が認められる電気生理学的事実と合致し、ネコ網膜においても、プロテインキナーゼAにより直接燐酸化され得るGluR6サブユニットが、ドーパミンによりグルタミン酸応答を増大させる可能性を高めた。A型水平細胞はB型と異なり、明視野から暗視野へ移行した時に強固なギャップ結合が認められる事から、明視野下でドーパミンによるグルタミン酸応答の増大とギャップ結合の解離により、A型水平細胞の周辺受容野が深く、狭く修飾され、明視野でのedge-detectionに寄与する可能性が示唆される。
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