研究概要 |
ミミズと同様に伸縮運動によって医療用マイクロロボットを移動させるための基礎研究を行い,粘液による流体くさび作用を利用して滑り方向によって摩擦を変化させて往復運動を一方向への直進運動に変換することを試みた. ピンオンディスク型の摩擦試験機を製作し,傾斜したシリコンラバーの板をピンに取りつけてシリコンオイルを満たしたディスク上に置き,ディスクの回転方向が変わった時の起動摩擦とそれに続く定常回転時の動摩擦を測定した.摩擦は起動時に急上昇した後,一定値に漸近した.滑り方向にすきまが減少する正回転の場合には,起動摩擦に及ぼす速度の影響はほとんど見られなかったが,逆回転時には速度が高いほど摩擦が高かった.一方,回転方向に関わらず滑り速度が高くなると定常摩擦が少し増加する傾向が見られた.以上の実験のすべてにおいて,正回転時の摩擦は逆回転時の摩擦よりも低かった.したがって伸縮運動によって複数の摩擦部の距離を変化させれば往復運動を一方向への直進運動に変換することができるはずである. この仮説を証明するための実験装置を製作した.ステンレス鋼製の平板を直動軸受で支えて水平方向に低摩擦で移動できるようにしてシリコンオイルを満たした.一方,油圧シリンダー用のラバーパッキングを2個取り付けてクランクメカニズムによってそれらの間隔を正弦波状に変化させて平板との間で流体くさび作用を生じさせて平板の移動量を測定した.その結果,平板が一方向に移動することを確認したが,回転方向の変化した直後に逆運動が見られた.これは運動方向の変化に対して摩擦の変化に時間後れがあるためと考えられる.したがって効率的な駆動のためには往復運動の速度を高くするだけでなく,その行程を長くしなければならないことがわかった.
|