研究概要 |
乾燥地・半乾燥地は降水量が少なく水資源が乏しいことに加えて,河川水,地下水の水質も悪化している。持続的な食料確保のために,降雨依存農業から灌漑農業に移行することが重要であり,さらに,灌漑効率を向上させるために,点滴灌漑を導入し,節水することが安定した水資源を確保するためにも重要である。 本研究の究極的な目的は,(1)降雨依存農業における通常の低い作物生産と比べて,適切な灌漑による持続的な収穫量を確保し,開発途上国における食料の安定確保に貢献すること,(2)乾燥地・半乾燥地にある開発途上国の塩水灌漑を行う際の,持続的な農業の正確な情報を得ること,(3)環境劣化の防止,水資源と土壌資源の保全などの全人類的な命題に貢献できることにあり,「乾燥地における持続的農業のための塩水灌漑管理」の技術パッケージを提案することにある。本研究は,低水質の灌漑水,塩を含んだ灌漑水を用いて,塩水点滴灌漑条件下で作物を栽培し,塩類集積の防止と持続的な農業を行うための,土壌改良による土壌環境と収量・品質を把握して適切な灌漑管理法を確立し,開発途上国における食料の安定確保に貢献することが最大の目的である。 今年度の研究概要は,降雨と2dS/mの塩分濃度,毎日灌漑と2日間断灌漑,有機物,鶏糞を施用した組み合わせで,ハウス内の砂丘砂でコムギ栽培試験を行った。その結果,少量頻繁灌漑,有機物施用の有効性を明らかにした。さらに,廃タイヤから再生産したゴム製浸潤型地中灌漑チューブと,飲料用の廃ガラスから再生産した土壌改良剤(ポーラスα)を砂質土壌の下に層状に埋設して浸透抑制層として機能させ,従来法と比較して約3倍の野菜の収量増加を示した。土壌水分センサーによる結果から,土壌改良剤の施用で,土壌水分が増加し,蒸散が促進されたことが誘引であることがわかった。
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