研究概要 |
マニ教はメソポタミアで生まれた教祖マーニー(216-276/7)が唱道した宗教であるが,7世紀までには中国にまで伝道され,漢文で翻訳されたマニ教文献が作られた.9世紀以降の大弾圧により文献の大半は失われたが,20世紀初めの中央アジア探検により,敦煌およびトルファンから漢文のマニ教経典が何点か発見された.これらはイラン語の原典からの翻訳であり,イラン語で表現された宗教概念がどのように中国語に翻訳されるかは,文化史的に非常に興味深いテーマである.しばしば仏教の用語を借りながら翻訳されているが,それがどれほど内容面で,本来のマニ教の概念と対応しているかが研究テーマになる. 奨励費の支給を受けた平成21年度の上半期には,このテーマで研究して得た成果を,口頭発表や論文で公開することに主眼をおいた.吉田は,マニ教徒の書記がどのように訓練されていたかについてが知られるソグド語文献を解読し,論文として発表した.Kosaはトルファンで出土して漢文のマニ教文献全点について内容の検討を行い,ハンガリー語に翻訳した.また二人は共同で日本に保管されている中国で製作されたマニ教絵画と,テキストとの関係について共同で研究し,世界マニ教学会で口頭発表を行った.
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