研究概要 |
今年度は、キセノン原子とグラフェンとの相互作用を調べるため、DFT,MP2,CCSD(T)/cc-pVXZ(X=D,T,Q)レベルで吸着過程のポテンシャル曲線を求め、吸着構造におけるXe-表面距離と結合エネルギーを計算した。プログラムはGAMESSを用いた。グラフェン表面はクラスターモデルで近似し、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンのようにベンゼン環を7個まで含む系に対して計算を行った。クラスターモデルの大きさ依存性、計算レベル依存性、基底関数依存性を検討し、最終的な吸着状態の見積もりにはMP2/cc-pVTZを適用することとした。キセノンとグラファイト表面の相互作用に対しては基底関数重合せ誤差(BSSE)をcounterpoise法で補正し、hollow site, on-top site, bridge siteで計算を行ったところ、hollow siteへの吸着がもっとも安定であり、結合エネルギーは142.8meV、吸着距離は3.6Åであることが示された。Xe原子のグラファイト表面への吸着については実験的に吸着距離のみが報告されているが、本計算値は実験値とよく一致している。金属表面については、Xe原子はon-top siteに吸着することが知られているので、吸着状態における電子状態の性質を調べるために、XeFおよびXe-BeOについても同様の計算を行った。その結果、これら極性が高い分子については金属同様on-top siteにより安定に吸着することが示された。
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