研究概要 |
近年、自在な光制御の可能性を秘めている光ナノ構造として、フォトニック結晶が世界的に関心を集めている。特にSi、InP、GaAs(バンドギャップ1.1~1.3eV、屈折率n=3.2~3.5)といった半導体材料を用いて光通信波長帯である1,550nmでのフォトニック結晶の研究が盛んに行われている。しかし、このような半導体材料フォトニック結晶は可視領域の光に対しては不透明であるため、バイオセンシングや高機能性ポリマーと融合、単一原子との結合などの可視光線を制御対象とする新たな光デバイスへの応用が困難である。そこで本研究はフォトニック結晶の新たな可能性を開くために、ワイドバンドギャプ半導体材料を用いて可視光領域フォトニック結晶を開発することを目指す。本研究では、ワイドバンドギャップ半導体材料の中でも比較的屈折率の高いシリコンカーバイド(SiC,n=2.5~2.7))という材料に新たに着目した。まず3次元有限差分時間領域法を用いて、SiCフォトニック結晶導波路や共振器の設計を行った。また、可視光フォトニック結晶を作製するためプラズマエッチングガスの組成比(SF6/02)や金属マスク厚みなどの最適化を行い、様々な格子定数(a=150~225nm)をもつSiCフォトニック結晶の作製に成功した。各格子定数をもつSiCフォトニック結晶導波路に可視光を入射して共振器に光を結合させ、共振器からの放射光を観察したところ、格子定数に応じた550~700nmの可視光領域における共振スペクトルが得られた。共振器のQ値はいずれも約600~900で設計どおりの値である。この結果は可視光領域における超小型マルチ分波デバイスを世界で初めて示したものであり、その意義は極めて大きい。今後、可視域における様々な発光体やセンシングなどとフォトニック結晶との融合といったさらなる展開が期待できる。
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