研究課題
特別研究員奨励費
出生直後の発達期における母親からの隔離によるストレスが、成長後の様々な行動に影響を与えることが知られているが、先行研究では不安・情動行動への影響が主に研究され、社会行動への影響についてはほとんど知られていない。そこで、本研究課題では新生仔期におけるストレス負荷が、後の社会行動発達に及ぼす影響とその基盤としての脳神経メカニズムについて多角的に分析することを目的とした。C57BL/6J雄マウスにおいて新生仔期に母仔分離経験が思春期の攻撃行動の発動・維持に与える影響についてはよく知られていない。実験1では、C57BL/6J雄マウスを用いて、母仔分離経験が思春期での攻撃行動の発動及び維持に与える影響について5-9週齢にかけて攻撃行動実験を行った。その結果、全週齢において母仔分離経験が、思春期で発動する雄マウスの攻撃行動を抑制したことが示唆された。さらに、攻撃行動の発現に関連しているテストステロン(T)に着目し、母仔分離が思春期(5週齢と6週齢)のT分泌に影響を与えるかどうかを血中T濃度及ぶ脳内アンドロゲン受容体(AR)発現から検討した。酵素免疫測定法を用いて血中T濃度を調べた結果、統制群では攻撃行動に顕著な差がみられた5週齢と6週齢の間でTレベルの上昇が確認されたが、母仔分離群では5週齢においてTレベルの亢進がみられ6週齢ではむしろ減少傾向にあった。免疫組織染色法を用いて腹側乳頭前核及び内側視索前野でのAR発現を調べた結果、母仔分離群と統制群の間に有意な差はみられなかった。第2実験では、母仔分離経験があるC57BL/6J雌マウスを用いて、成体期での社会行動を社会的探索行動テストで解析した。その結果、母仔分離経験は成長後C57BL/6J雌マウスでは刺激マウスが雌又は雄マウスに関わらず、母仔分離経験は刺激個体に対する探索時間が現少し、不安関連行動であるストレッチアプローチが増加しされたことから、社会探索行動が抑制されたことを示唆された。
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Endocrinology 150
ページ: 1061-1068