研究概要 |
平成22年度の研究として,(1)関東平野の稲作卓越地域における,貸借権の設定や作業受委託による特定の担い手への農地の利用集積の仕組みについての研究は,千葉県成田市北須賀地区を事例として,大規模稲作経営を行う特定の担い手へ,農地が集積される仕組みに関する現地調査を行った。この研究に関しては,学術誌「地学雑誌」へ掲載された。(2)中山間地域における,棚田での農地利用をめぐる農家の存立基盤についての研究は,長野県上水内郡中条村大西地区を事例とし,棚田での耕作が維持されてきた基盤を,地域の「内的」要因と,棚田百選としてまなざされる「外的」要因から考察した。この研究に関しては,学術誌「人文地理」63巻2号への採録が決定され,2011年4月末に刊行される予定である。(3)長野県須坂市における,農産物加工に関する研究を行い,長野県須坂市の味噌・醤油醸造を事例に,生産から加工に至る動向について歴史的経緯を含めた調査を実施した。この研究に関しては,「日本地理学会2010春季学術大会」にて発表し,学術誌「地理科学」66巻2号への採録が決定され,2011年4月末に刊行される予定である。(4)淡路島三原平野の三毛作地帯を事例とし,高度に労働集約化がされた土地利用型農業地域にて調査を行い,村落社会構造を分析することから,農地の管理がどのように行われているのかを考察した。この研究に関しては博士論文としてまとめ,公開審査も終え,学位請求論文として提出するために現在英訳をしている段階であり,学術誌「人文地理」への投稿を準備している。また昨年度に学術誌「地理学評論」に掲載された論文が評価され,「平成22年度日本地理学会賞(若手奨励部門)」を授賞した。
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