研究概要 |
平成22年度は、主にアマガエル3体系に関する実験・数理研究を行い、査読付き学術論文として公表した(Phys.Rev.E, 83, 031913 (2011))。我々は先行研究において、オスのニホンアマガエル2匹は交互に逆相同期して鳴く傾向があることを報告している。本論文においては、まずアマガエル2体系の逆相同期発声行動を説明する2次の高調波の影響を考慮した振動子モデルを導入し、それを3体系に拡張することでアマガエル3匹の同期発声行動を理論的に予測した。この際、2次の高調波の影響の大きさを表すパラメーターと3組の内1組のカエル同士の相互作用の大きさのパラメーターの2つを変化させて、振動子モデルにおける同期状態の変化を調べる分岐解析を行った。次に、3匹のアマガエルを使った行動実験を行い、理論的に予測された三相同期状態や1:2逆相同期状態が実際に観測されることを示した。この際、録音データに対して独立成分分析法を用いた時系列データ解析を行うことで、個々の同期状態の安定性を定量的に解析した。他方で、音声可視化デバイス「カエルホタル」を用いたフィールド調査を行い、実際の水田でアマガエルの空間配置と発声タイミングを検出できることを示した。今後の課題としては、このフィールド調査方法の拡張およびアマガエル多体系の振動子モデルとしての理論解析を予定している。これらの研究成果を査読付き上述の学術論文1件の他、国内会議9件および国際会議2件におけるポスター・口頭発表として公開した。
|