研究概要 |
これまで私は、有機ケイ素化合物を用いる炭素-シアノ結合を報告している。この反応は、有機ケイ素化合物とロジウム錯体の反応により生成するシリルロジウム種を活性種とし、この活性種がシアノ基と反応することで生成するイミノアシル錯体からシリルイソシアニドが脱離することにより進行するという、これまでに報告された一般的な炭素-シアノ結合切断の機構(酸化的付加)とは異なる興味深い反応である。今回、ジシランを用いるニトリルのシリル化反応において、オルト位にフェノキシ基を有する芳香族ニトリルを用いた場合、元のシアノ基の位置とは異なる位置にシリル基が導入されることを見出した。これは、中間体として生成するアリールロジウム種でロジウムの1,5転位が進行することでフェノキシ基上にロジウムが移り、その後ジシランと反応することで進行したものと考えている。遷移金属の1,5転位の例は限られており、パラジウムの1,5転位を含む触媒反応が一例報告されているのみである。この興味深い現象に関する知見を得るために、転位する側のアリール基に種々の置換基を導入したニトリルを用いて検討を行った。その結果、ロジウムの1,5転位は電子的な影響を受け、転位する比率が変化することが分かった。また、配位子の添加効果についても検討し、未だ傾向等は分かっていないが配位子の添加によっても転位する比率が変化することも明らかとした。以上のように、ロジウムの1,5転位を含む触媒反応を見出した。この反応をさらに検討することで有機ケイ素化合物による炭素-シアノ結合切断の反応機構に関する知見が得られると考えている。
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