研究課題
特別研究員奨励費
南極サブミリ波望遠鏡は口径30cmの電波望遠鏡であり、南極ドームふじ基地にて銀河系内星間ガスを掃天観測するべく開発を進めてきた。本年度はチリのアタカマ砂漠北部に位置するパリナコタ村に南極可搬型サブミリ波望遠鏡を設置し、性能評価と観測を行った。性能評価では指向性精度、ビーム特性、能率、雑音温度を測定した。指向精度は角分解能の1/10(0'.9)以下が要求される。光学ポインティングと電波ポインティングの2段階で望遠鏡器差の補正を実施し、要求を満足する0'.7を達成することができた。ビーム形状は、太陽をスキャンし出力を理論モデルでフィットすることで得た。その結果、対称性に優れ、かつ設計値と矛盾の無い分解能9'.4±0'.4であることを確認した。ビーム能率は輝度温度が既知の新月を観測することで推定し、87%の高効率を得た。これはブロッキングが少ないオフセット方式を採用した成果である。大気込み雑音温度は3000K程度であった。その後、Orion KLより461 GHzの一酸化炭素輝線CO(J=4-3)、492 GHzの中性炭素原子輝線[CI](^3P_1-^3P_0)を受信し、ファーストライトを達成した。得られた輝線強度、速度共に既存データと整合性を持ち、望遠鏡として正しく動作することを示した。これにより、チリで検証困難な耐寒性能以外の点で、本望遠鏡が南極で本格運用できる性能を有すると示すことができ、望遠鏡の開発に成功した。続いてM17領域をCO(J=4-3)輝線にてマッピングし南極でのサーベイに先立って、銀河面の観測を開始した。既存のコロンビアサーベイによるCO(J=1-0)輝線のデータと強度比を取ることで、温度や密度等、星間物質の物理状態を推定できた。さらに、つくば32m鏡による同一領域のアンモニア輝線観測も行ない、ガスがHII領域によって加熱されている様子を明らかにした。
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Polar Science 3
ページ: 132-221