研究課題
特別研究員奨励費
有機鉱物全般に共通する特徴を見いだすべく、1852年から2010年までの約300編の文献を参照し、その結晶構造および生成機構を議論した。その結果、有機鉱物最大の特徴は、生成機構と構造ユニットの関係にあることが判明した。その生成機構は、(1)炭素一炭素結合の生成と解離を伴う構造ユニットの形成(2)十分に安定化した構造ユニットの濃集と結晶化、の2段階に分けられる。代表的無機鉱物である珪酸塩鉱物の生成機構においては、構造ユニットが重合する際にシリコン-シリコン結合は生成されず、必ず架橋酸素と呼ばれる酸素原子を介して重合する。また、構造ユニットの重合と、鉱物の結晶化は同時進行することからも、有機鉱物の生成の際に起きる重合反応とは根本的に異なる重合メカニズムであることを解明した。ゲータイト(Fe^<3+>OOH)やヘマタイト(Fe^<3+>_2O_3)は鉄を含む鉱物および材料の変質物として生成する一般的な二次生成鉱物である。低温(4℃)から高温(70℃)までの様々な温度で合成したゲータイトの結晶形態を原子間力顕微鏡で調べたところ、幅と厚みはほぼ同じであったが、4℃で合成したものは長さ1μm以下なのに対し、70℃で合成したものは長さ2μm以上であることが分かった。これらのゲータイトに対し、X線光電子分光分析を行ったところ、高温合成のゲータイト最表面に存在する酸素の46%がヒドロキシル基であるのに対し、低温合成のものは42%にとどまった。また、ヘマタイトについては、平均粒径7nmの板状結晶と30nmの菱面体結晶をアスコルビン酸で溶解させたところ、7nmの板状結晶が30nmの菱面体結晶の2倍以上の速度で溶解することが判明した。以上の結果は、ナノ鉱物の表面構造や化学反応性が、結晶全体の組成や構造だけでなく、粒径や形態といった外的要因にも依存していること示している。
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