| 研究概要 |
光ファイバのクラッド領域において,フォトニック結晶と呼ばれる屈折率の異なる材料を周期的に配置した構造を導入し,フォトニックバンドギャップ(PBG)と呼ばれる光の存在できない条件を利用することで,意図的に設けられた欠陥部分であるコアに光を閉込めて光の伝送を実現する,フォトニックバンドギャップファイバ(PBGF)が注目を集めている.特に,コアをシリカとし,クラッド領域を高屈折率散乱体を周期的に配置することにより形成するソリッドコア型は,伝送帯域が周波数に対して不連続に現れることから,ファイバ増幅器ならびにファイバレーザーにおける増強自然放出光の抑圧のためのファイバ型光フィルタデバイスとしての応用が期待されている.
ソリッドコアPBGFにおいて,曲げによる損失により,その性能が制限されてしまうことが懸念されている.また,ソリッドコアPBGFの曲げ特性については,まだわかっていないことも多く,理論検討が必要であった.さらに,低曲げ損失,低閉込め損失,および単一モード動作の実現の間にトレードオフの関係があることも問題となっていた.そこで,本研究では,ソリッドコアPBGFにおいて,前年度の研究成果である,低曲げ損失構造条件に基づき,ヘテロクラッド構造と呼ばれる,まったく新しいクラッドの概念を提案し,その構造を用いることによって,トレードオフの関係にある,低曲げ損失,低閉込め損失,および単一モード動作を両立することが可能となることを示している.さらに,クラッドのフォトニック結晶への面外伝搬光に対するPBGの形成を理解するためのモデルを提案し,それを用いることによって,ソリッドコアPBGFの曲げ特性の構造依存性を理解することが可能となることを示している.
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