研究概要 |
本申請研究では,生きた細胞内においてRNA分子と特異的に結合し,外部から光照射によって制御することを可能にする新規な機能性分子プローブを開発する. RNA認識プローブは,RNA結合ドメインPUM1HD分子を基本とし,光制御プローブはPUM1HDと光受容体として青色光受容体フォトトロピン内のLOV2ドメインを用いる.LOV2ドメインは460nm付近の波長の光(hv)を照射すると構造変化を起こすことが明らかとなっている.これを利用してPUMIのRNA結合をLOV2ドメインの構造変化で制御するプローブを開発する.対象となるmRNA配列からの翻訳を抑制する方法として,リボザイム配列を利用した翻訳抑制システムの構築を試みた.用いるリボザイム配列としてはHammerhead ribozyme(HHR)グループの配列を選択した.HHR配列は自己触媒活性を有し自身内のRNA配列を切断するため,この現象を利用して任意のmRNA配列からの翻訳を抑制するシステムを開発した.このリボザイム制御をコントロールするために,RNA結合ドメインPUM1HDを利用した.まず,リボザイムRNA配列の中に,PUM1HDが特異的に結合する配列を配置してその影響を確認した.RNA二次構造予測ソフトを元に,二本鎖構造,相補配列を加えてアレンジした結果,配置前と同レベルの翻訳抑制能を持つリボザイム構造を構築することに成功した.実際にこの配列と改良型PUM1HDを培養細胞へ共発現させた結果,翻訳抑制が一部解除されて発光値が上昇した.この結果は,リボザイム構造にPUM1HDが結合した結果,リボザイム酵素活性を阻害しRNAが翻訳ステップへ進行したことを示している.これはHHRリボザイムの活性をRNA結合タンパク質によってコントロールすることに成功した初めての例である.
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