研究概要 |
近年発達してきた分子生態学的解析により,細菌の遺伝子データベースが蓄積されてきている。このデータベースを利用し,遺伝子情報を釣り針として細菌を生きたまま選別・分取することができれば,微生物学の進展において革新的な技術となりうる。昨年度までに,細胞の固定操作を必要とせず、細胞内RNAを検出可能な化学反応プローブである,Reduction-triggered fluorescence(RETF)プローブを開発した(Bioconjugate Chem., 20, 1026)。そこで本年度は,本プローブを用いた、生細菌の検出および分離技術の確立を目的として検討を行った。 非固定のEschirishia coli, Paracoccus denitrificansに対し,E.coliの23S rRNAをターゲットとしたRETFプローブをSDSを用いて細胞内に導入し、フローサイトメトリー(FCM)によって解析したところ、E.coliのみから特異的なシグナルを検出できた。また、E.coliとP.denitrificansを1:1で混合したサンプルに対し、E. coliの23S rRNAをターゲットとしたRETFプローブを適用し、FCMを用いて強いシグナルが得られた領域を分取した。これを再培養し、得られたコロニーをPCRで解析したところ、サンプルの90%以上がE.coliであることが確認できた。これより、本手法を用いることで、ターゲットの微生物を高度に濃縮できることが示唆された.
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