研究概要 |
1.染色体転座を伴った早発性卵巣機能不全の切断点解析 X染色体転座を有する早発性卵巣機能不全(POF:Premature Ovarian Failure)4例を集積し、転座切断点の解析を行った。すべての症例の転座切断点を塩基レベルで決定した。3症例においてそれぞれ遺伝子:COL4A6(Xq22.3),IGFBP7(4q12),C14orf159(14q32.12)の断裂を確認した。これら3遺伝子をPOFの有力な候補遺伝子と考え、染色体構造異常を伴わないPOF患者検体で変異解析を行った。3遺伝子のうちX染色体に位置するCOL4A6遺伝子で、一つのミスセンス変異を同定した。このミスセンス変異が疾患を惹起するかどうかは結論が出ていないが、今後の解析が待たれる遺伝子である。他2遺伝子は、病的な変異を認めなかった。また、COL4A6遺伝子の断裂が認められた転座症例は、正常X染色体の不活化と断裂により機能的にNullと考えられる。そのためCOL4A6遺伝子は、POFの病態に関与している可能性が示唆された。 2.先天性多発奇形症例における染色体微細構造異常解析 これまでに集積された先天性多発奇形症例を高解像度のマイクロアレーを用いて全ゲノムの網羅的なコピー数変化の解析を行った。検出されたコピー数変化は、データベース等を利用して、その病的意義を検討し、病的と疑われる領域においては、FISH法や定量PCR法などの他の方法でも確認した。解析によって染色体微細構造異常・原因が明らかになった疾患・症例がある。今後これらの症例の表現型と遺伝型の関連性や染色体微細構造異常の発生メカニズムの検討を行う。これらの解析を通じ、アレーによる高密度・詳細なゲノム解析の重要性が明らかになるとともに、これらの論文作成を予定している。
|