研究概要 |
本研究者の所属する研究グループでは,芳香環側鎖がPKC活性化に重要な役割を果たしているaplysiatoxin(ATX)に着目し,ATX単純化アナログaplogの開発に成功している.Aplogは抗がん剤bryostatin-1と同等の抗腫瘍活性を示すことから,大量供給可能な新規抗がん剤のリード化合物として有望である.ATXの芳香環上のヒドロキシル基およびブロモ基は生物活性に影響を与えていることが明らかとなっているが,芳香環上の置換基のaplogの生物活性に与える影響は不明である.そこで,aplogの芳香環上の置換基効果を調べることにした. Aplogあるいはaplogのdibenzyl保護体を原料に,21-Br,19-I,21-I,19-NHAc,21-NHAc体を合成した.得られた誘導体のPKCδ CIBドメインに対する結合能を評価したところ,aplogから疎水性が増大したハロゲン化誘導体はaplogの2-5倍結合能が上昇していたのに対して,親水性が増大したNHAcは結合能が低下していた.特に,21-NHAc体の活性低下が顕著であったことから,21位付近の疎水性が結合能に重要であることが示唆された.これらの誘導体ののヒトがん細胞に対する増殖抑制活性を評価したところ,がん細胞増殖抑制活性とPKC結合能との間に相関が認められた.特に,19-Iおよび21-I体はbryostatin 1よりも高いがん細胞増殖抑制活性を示したことから,新たな抗がん剤シードとなる可能性が考えられる.現在,これらaplog誘導体の発がんプロモーション活性についても評価中である.
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