「多機能性を有する、分解性環状アセタール由来新規バイオマテリアルの開発」を目的に、(1)再生組織構築のための細胞内包担体、(2)酸性分解生成物排出ゼロのドラッグデリバリー担体の開発を行った。(1)5段階の合成より環状アセタール含有新規ヒドロゲルを合成し、間葉系幹細胞の内包化を行った。細胞内包ゲルを培地中にて培養したところ、数週間後にも良好な細胞生存性を示し、骨芽細胞誘導培地中にて骨芽細胞へ分化する様子が確認された。またゲルの膨潤性の違いによりゲル中の細胞の形状に変化が見られ、この形状の違いが細胞分化に影響を与えることが示された。(2)環状アセタール含有親水性ポリマーをコアに、疎水性ポリカーボネートをシェルに有するABA型トリブロック共重合体を合成した。合成には環境低負荷型触媒である酵素触媒を用い、安全性に考慮したプロセスによるバイオマテリアル合成を達成した。合成した共重合体から両親媒性ミセルを作製し、ミセル粒径や臨界ミセル濃度を測定したところ、これらの値はポリマーの親疎水性比に依存することがわかった。抗がん剤であるメトトレキセートをミセル内に内包させ、放出速度のpH依存性を評価したところ、pHが低下するに従い環状アセタールの分解率が増加するため、放出速度が上昇するという傾向が見られた。これらの結果より、本研究で作製した高分子ミセルのpH応答型ドラッグデリバリーキャリアーとしての可能性が示された。 これらの結果に基づき論文を2報投稿し(受理済み)、国内外の学会にて研究内容の発表を行った。
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