本年度は、研究実施計画通り学位申請論文「戦後「論壇」における『中央公論』のジャーナリズム史研究-「風流夢譚」事件と編集者の思想を中心に」を完成させた。2009年5月の予備審査に草稿を提出し、それに合格し、同年11月に博士論文を提出し、2010年3月に博士(文学)の学位授与が認められた。 本年は、とりわけ博士論文の未完成部分であった一章の論壇時評の分析と、二章の『中央公論』の主要論文の分析を中心に取り組んだ。一章では、1945~1972年の『朝日新聞』『毎日新聞』『読売新聞』の膨大な論壇時評を読み込み、それぞれの時期ごとの特徴を位置づけた。二章では、これまで作成したものに加えて、1950年代後半の『中央公論』の論調を代表するルポルタージュの分析を行った。 それにこれまで総計22人延べ30回の聞書き調査の内容を精査し、中央公論社の一次資料である『書店はんじょう』『中公社報』『社内だより』の分析を盛り込み、これまでの投稿論文から構成した三章と四章に加筆して、博士論文を完成した。 研究の成果は大きくいって四点に集約される。第一に、戦後「論壇」の全体像を提示したこと。第二に、その「論壇」において『中央公論』を特徴づける主要論調を明らかにしたこと。第三に、「風流夢譚」事件の全貌を戦後ジャーナリズム史の中で位置づけたこと。第四に、総合雑誌編集者の役割の問題提起を行ったことである。 2年間を通じて滞りなく研究課題を遂行し、最大の研究目的である博士論文の完成を計画通り達成することができた。
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