研究概要 |
【目的】近年,我が国の花粉症などの深刻なアレルギー罹患者は,人口のおよそ1/3にまで激増し,国民病として大きな社会問題になっている.このような中,プロバイオティクスである乳酸菌やその成分が有する免疫調節作用に強い関心が集まっているが,乳酸菌由来成分の腸管免疫調節機構の詳細は未解明な点が多い.そこで本研究では,免疫応答に重要な役割を果している微生物由来成分認識受容体に着目し,乳酸菌成分の腸管自然免疫系を介する消化管恒常性維持機構を解明することを目的とした. 【結果】遺伝子クローニングにより,これまで未解読であったモルモットNOD1およびNOD2の部分配列の解読に成功した.この新規配列のヌクレオチドおよびアミノ酸相同性解析と系統樹解析により,モルモットNOD1およびNOD2は,マウスに比べてよりヒトに近い相同性を示すことが明らかとなった.また,Ussing Chamberを用いたマウス腸管短絡電流法により,NOD2アゴニストであるmuramyl dipeptide(MDP)の腸管神経系への作用を検討した.その結果,MDP添加により,短絡電流刺激の有意な増加が認められ,電位依存性Naチャネル阻害剤であるTetrodotoxinにより,MDP誘導性短絡電流増加は完全に阻害された. 【意義と重要性】本研究で得られた知見は,今後腸管における各種パターン認識受容体を介するシグナル伝達経路について,その認識機構を分子レベルで解明するための糸口となると確信する.プロバイオティクスやプロバイオティクス由来成分とそれらに対応する生体内レセプターの関係を詳細に検討し,消化管イントラネット調節機構を発展的に把握することで,アレルギー,感染症および炎症性疾患予防に寄与する生体防御食品の創製が大いに期待できる.
|