研究概要 |
本研究は,運動により高齢者の認知機能,特に加齢により衰える注意力が改善するメカニズムについて,心理・社会的要因と生理的要因という2つの側面から検討することを目的としている.一昨度の研究からは柔軟性やバランス能力といった体力が注意力と関係することが明らかとなった.また昨年度の研究からは,日常生活における活動の中で身体活動は注意力と関連するが,社会活動や文化活動は関連しないことが明らかとなった.日常生活におけるさまざまな活動と注意力との関連をみた研究結果については,日本スポーツ心理学会の学会誌であるスポーツ心理学研究第38巻1号(2011)に掲載される. 平成22年度の研究計画としては,運動が認知機能を改善するメカニズムとして良い健康習慣が間接的に関わっている可能性が指摘されていることから,生活習慣と注意力の関連について検討することとした.地域在住の65歳以上の高齢者を対象に生活習慣と注意力の関係を調べたところ,男性において特に睡眠や休息あるいはストレスといった休養が,注意力と関連していることが明らかとなった.すなわち,生活習慣の中でも休養は運動が注意力を改善するメカニズムの一因となる可能性が示された.この結果については昨年9月に愛知で開催された日本体育学会第61回大会ならびに今年3月に長崎で行われた九州スポーツ心理学会第24回大会にて発表を行った.また,昨年8月に鹿児島で開催された九州体育・スポーツ学会第59回大会では,トランスセオレティカルモデル(TTM)をもとに新たに「継続」という視点を運動に取り入れ,注意力との関係をみた研究結果の発表を行った.
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