研究概要 |
本研究では,様々な社会活動に遠隔ユーザがネットワークを介して仮想的に参加するような多人数参加型実・仮想空間混合インタラクション用フレームワークの実現を目指している.本研究で提案するフレームワークでは,オブジェクトの更新頻度をQoS適応制御するため,遅延時間が大きい場合,インタラクションに大きな影響を与えてしまう.そこで,本年度では,各ノードにおける計算遅延が,十分に実用できる程度の遅延であるのかを評価するため,ミドルウェアとして実装し,評価実験を行った. その結果,仮想空間内に1500以上のオブジェクトが存在する場合においても,エリアノードにおけるユーザが操作するアバタの位置に従い変化する各オブジェクトの重要度の計算遅延は12ミリ秒程度であり,帯域制御ノードにおける重要度に基づくQoS適応制御にかかる計算遅延は処理待ち遅延を含めても25ミリ秒以内に収まっていた.また,それらを含めたネットワーク上でのエンド・エンド遅延は,およそ200ミリ秒以内に収まっていることが確認できた. 本研究成果によって,仮想空間におけるアバタのコンテキストを基にしたQoS適応制御によって,ユーザに違和感を与えずに通信量の削減ができることがわかった.これは,よりリアルな情報共有を目指す仮想空間に関する研究において,大きな貢献である.また,本研究で提案するフレームワークが,普及環境において,実・仮想空間混合対話型アプリケーションを容易に構築することが可能であることを示すことができた. これらの成果は,ACM NOSSDAV 2008によるデモ発表,第16回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(以下,DPSWS 2008)によるデモ発表を行った.DPSWS 2008によるデモ発表では,特別セッション賞を受賞した.また,これらの実験結果をまとめた論文が情報処理学会論文誌に採録された.
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