研究概要 |
インデン骨格は多くの生理活性物質や有機電子材料にみられるものであり、インデンの1位と3位にそれぞれ位置を制御して異なるアルキル基を導入することができれば有用な手法となる。そこで、銀触媒によるハロゲン化アルキルとインデニルリチウム反応剤のカップリング反応を利用して、二つの異なるアルキル基を位置を制御して置換させた1,3-ジアルキルインデン誘導体の合成について検討を行った。5モルパーセントの臭化銀存在下、カップリング生成物である1位に1,1-ジメチルノニル基が置換したインデン誘導体から調製したインデニルリチウムを第二級臭化アルキルに作用させたところ、1位に第二級アルキル基、3位に第三級アルキル基が置換したインデン誘導体が、ジアルテレオマー比1/1、44%の収率で得られた。 次に、本銀触媒反応の反応機構について検討を行った。臭化銀を量論量用いて反応を行ったところ、臭化銀に対して1当量のインデニルリチウムを用いた場合は全く反応が進行せずに原料が回収されるのみであった。これに対し、2当量のインデニルリチウムを用いた場合はカップリング反応が進行し、90%の収率で対応するカップリング体が生成した。またこのとき、インデニルリチウムのホモカップリング体が、用いた臭化銀の約半量生成した。これらのことから本反応の反応機構は、系中でまず臭化銀がインデニルリチウムによって0価に還元され、さらにもう1当量のインデニルリチウムが反応することで0価の銀のアート錯体が生成する。このアート錯体からハロゲン化アルキルへの一電子移動が起こり、アルキルラジカル中間体が生成する。それが1価の銀錯体によって捕捉され、生じた銀錯体からの還元的脱離によってカップリング体が生成し、このとき生じた0価の銀に対して系中に存在するインデニルリチウムが作用することで再び銀のアート錯体が再生するものと考えられる。
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